無隣館再開について
劇団青年団は、2010年をもって劇団員の公募を停止しました。
しかしながら、その後も、入団希望者あるいは私たちの下で演劇を学びたいという問い合わせを多数いただいてきたことから、2013年以降三期六年にわたって演劇私塾「無隣館」を開校してきました。
青年団、そしてこまばアゴラ劇場が、数多くの俳優、演出家、劇作家、スタッフを輩出してきたことはご存じの通りです。昨年から今年にかけても青年団演出部所属の谷賢一が岸田國士戯曲賞並びに鶴屋南北戯曲賞(本賞は私と二年連続で本劇団員が受賞)を受賞するなど、多くの演劇賞、戯曲賞を獲得し高い評価を得てきました。
青年団とこまばアゴラ劇場に、何か特別な教育法があるわけではありません。
私たちは、才能が思いのままに延びていく場を提供し、切磋琢磨する環境を用意してきました。
ヨーロッパ各国も文化支援のあり方は様々ですが、そこには必ず、長年培われてきた競争と淘汰の原理があります。私たちは、その最小の形を、劇団内と劇場運営を通じて実現してきたと考えています。
2021年春に、演劇やダンスの実技が本格的に学べる日本初の公立大学となる兵庫県立国際文化芸術観光大学(仮称・認可申請中)が開学予定であることから、無隣館は2019年春にいったん閉校としました。しかしながら、こちらも再開の要望が強く、私たちとしても、何か新しい形での再開校ができないかを模索してきました。
そこで兵庫県豊岡市の江原河畔劇場開業にあたってクラウドファンディングを実施するにあたり、そのストレッチゴールの一つとして「無隣館の再開」を掲げたところ、多くの皆さんの賛同を得ることができました。
さらに、そこに今回のウイルス禍が襲いました。
私たちは、新たな劇団の本拠地である豊岡市での合宿型の集中セミナーと、オンラインでの講座を組み合わせた、新しいスタイルの無隣館を設計しました。
ウイルス禍の影響で公募が遅くなりましたが、来年春までの短期集中型で、これまで蓄積してきた演劇知のすべてを受講生に伝えていきたいと考えています。
http://www.komaba-agora.com/2020/06/10824
ぜひ、多くの方に、ご参加いただければと願っています。
平田オリザ