共通テストの試行調査には別回答があるのではないかという件と前売り開始

2018年3月31日

現在のセンター試験に代わって、2020年度から始まる新しい大学入学共通テストに向けた試行調査の採点結果が公表されました。

http://www.dnc.ac.jp/corporation/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h29_01.html

 27日付の朝日新聞に、国語の問題の一部が載ったので、ご覧になった方も多いかと思います。私はチリから戻る機内で読みました。全体は上記のサイトでダウンロードできます。

 
ここから先は、問題文と照らし合わせないと、意味がちっとも分からないと思いますので、興味のある方だけお読みください(興味のない方は、ぜひ、飛ばして下の方の告知をお読みください)。

私は、この第一問の問3には、複数の回答があるように思います。

大学入試センターが発表した正答例は、以下の通りです。

 確かに、部活動の終了時間の延長の要望は多く、市内に延長を認める高校も多いことから、延長を提案することは妥当である。しかし、通学路は道幅も狭い上に午後六時前後の交通量が特に多いため、安全確保に問題があり、延長は認められにくいのではないか。(118字)

しかしながら、以下のような答案も可能なのではないかと私は考えました。

 確かに部活動の終了時間の延長の要望は多く、市内に延長を認める高校も多いことから、延長を提案することは妥当だ。しかし、大会前だけの延長を提案すると、勝利至上主義と受け取られ、生徒会部活動規約第二章第五条と矛盾すると受け取られるのではないか。(120字)

会話文の流れとしては矛盾はなく、これも正答にしてもいいのではないかと思います。ただ、この別解の弱いところは、問題文の方に、「それぞれの根拠はすべて【資料1】~【資料3】によること」と書いてある点です。
 しかし、【資料】ではない「生徒会部活動規約」は、問題全体の冒頭に示されており、設問全体の背景となっています。問3でも「規約」に触れてはいけないとは書いてありません。また、この別解でも、【資料2】の他校が「大会・発表会などの前」には延長が許可されているという記述にはかろうじて関連付けています。「会話文」の中にも、「いつもあと少しのところで赤雲高校に勝てない」「わたしも、せめて試合前には練習時間を延長してほしい」という発言のあとに、それを補強する材料として【資料2】が示されています。
 ですから、この別解でも、【資料】に言及してないとまでは言いきれず、これを完全な誤答とするのは難しいのではないかと考えました。
 ただし、大学入試センターが示した正答の条件では、この別解は、あきらかに誤答とされてしまいます。
ぜひ、国語教育関係者の見解をお伺いしたいところです。

 もう一点、私が問題に思うのは、この別解の方が「面白い」という点です。
 私がこの別解も妥当だと考えるのは、会話文の冒頭で、森の発言が、島崎によって「規約通りに進める必要があります」と素っ気なく却下されたからです。
 新聞部長として、言葉に自信を持っていた森は無意識のレベルで傷つき、後段の島崎の「私も、せめて試合前には」練習時間を延長してほしいという発言に反感を覚えたのではないかと考えます。見事な伏線です。

 またメンバーの中で、森だけが生徒会執行部(副会長)を兼任しています。なぜ、生徒会から来ている、しかも新聞部の森が、会話文の冒頭で規約を無視するような軽率な発言をしたのでしょうか? このミスは、設問上は、問1を立てるために、こう書かれた訳ですが、だとしたらミスをするのは島崎でもいい。その方が、うっかりやさんの委員長を常にたしなめる冷静な副委員長(新聞部で生徒会執行部兼務)ということで、設定としては首尾一貫します。
 しかし、この会話文の作者は、あえて、そのようにしなかった。であるならば、ここには何か、作家の意図、伏線があると考える方が自然です。少なくとも、この「会話文」を読んだ演出家は、そのような可能性を読み取らなければなりません。

 この第一問全体は、生徒会規約、アンケート、他校の実態調査という資料、新聞記事、そして会話文というように、いわばモードの違う文章を組み合わせて構成されています。特に、人間の意識の流れが反映される「会話文」は論理的に進むとは限りません。この非論理的な部分と客観的な資料を組み合わせて正答を導き出すような設定になっていれば、この問題は、真の意味での良問になっていたのではないでしょうか。

私の所属する大阪大学は、昨年2月に実施した入学試験で、本来複数の回答がある設問について一つのみを正解とするミスを犯しました。また外部からの指摘をいただいたにもかかわらず対応が遅れたために、関係する皆さんに多大な迷惑をおかけしました。私は、その責任のある部署にいるわけではありませんが、同じ組織人として深くお詫びしたいと思います。

 一方で、入試問題が高度化し、思考力を問うような設問を設定しようとすると複数の回答が出てくることは避けがたく、今後はそれを前提として設問のあり方が検討されるようになるかと思います。
 ただ、それは受験生の多い共通テストにはなじまないのではないかと危惧します。
 本来ならば、共通テストでは記述式を外して、基礎的・基本的な学力、知識だけを測り、「思考力」の部分は各大学の二次選考に任せていいのではないかと個人的には思います。しかし、ここまで制度設計の準備が進んでしまっている以上、なかなか後戻りは難しく、関係者のご苦労が忍ばれるところです。

と長々と書きましたが、さらに洞察の深い読者なら、これが新作『日本文学盛衰史』の戯曲がまだ書けていない私の現実逃避であることはおわかりかと思います。
 しかし、容赦なくチケット発売日はやってきます。

http://www.seinendan.org/play/2018/01/6542

 今回は、ロングラン公演ということでチケットの発売方法が変わりました。
 一番早いのは、本日(3月31日)、午前10時からの前売り券になります。
 その件についても書きました。

http://www.seinendan.org/2018/03/6642

そして、もちろん、一番お得なのは、こまばアゴラ劇場の支援会員になっていただくことです。新作『日本文学盛衰史』は吉祥寺シアターでの上演ですが、支援会員の皆さんには、こちらも何度でもご覧いただけます。

http://www.komaba-agora.com/members

2018年度からは、子育て世帯への割引など、さらに制度を充実させています。ぜひ、ぜひ、ご利用ください。
こまばアゴラ劇場の経営は、ひとえに、この支援会員の会員数にかかっています。どうか、ご協力ください。

 『革命日記』は順調に稽古が進んでおります。

http://www.seinendan.org/play/2018/01/6540

さらに明日4月1日からは、日仏合同公演『GHOSTs』の前売り券も発売になります。

http://www.seinendan.org/play/2018/02/6584

見所満載です。繰り返しになりますが、支援会員になるのが一番お得です。

慶應丸の内キャンパスでのワークショップ。都内で、がっつり創作までやるのは、ここだけになります。例年、満席になりますので、お早めにお申し込みください。
場所柄、企業の方も多く参加されます。
 
http://www.sekigaku-agora.net/c/2018/ho2018a.html

 ギリギリまで募集は行っているようです。

日記の続き
9月
1日 朝の飛行機で台北へ。『台北ノート』稽古開始。
2日 スタッフミーティングと終日稽古
3日 終日稽古
4日 朝の飛行機で富山空港へ。利賀村でアジア演出家フェスティバル、日本チーム上演。
5日 この日もアジア演出家フェスティバル、中国チーム上演
6日 韓国チーム上演
7日 インドネシアチームと韓国チーム上演、レセプション
8日 午前中シンポジウムと閉会式、夕方の便で小松空港から台北へ
9日 台北で『さようなら』を上演、トークあり。夜は『台北ノート』の通し稽古。
10日 『台北ノート』稽古
11日 アンドロイとを使った日本語教育のデモと講演会。夜は『台北ノート』稽古。
12日 『台北ノート』仕込みと稽古。
13日 『台北ノート』場当たりと通し稽古
14日 記者会見とゲネプロ
15日 『台北ノート』初日。満員御礼。
16日 日本語教育関係の講演会。マチネはトークあり。
17日 『台北ノート』千秋楽。打ち上げ。楽しかったなあ。
18日 午前の便で、そのままバンコクへ。そして、そのまま『バンコクノート』稽古開始。
19日 『バンコクノート』稽古
20日 この日から昼はチュラロンコン大学で講義、夜は稽古
21日 朝、スカイプで教授会出席。夜、『バンコクノート』稽古。深夜便で関空へ。
22日 神戸で兵庫県庁打合せ。豊岡へ。豊岡総合高校授業。江原地区視察。夕食会。
23日 豊岡市アートイベント。飛行機で伊丹へ。大阪大学で仕事。
24日 福岡へ。ワークショップの発表会と講演会。帰京。台北-利賀-台北-バンコク-関西と回って23日ぶりに帰宅。
25日 午前中の便で再びバンコクへ。『バンコクノート』稽古
26日 早朝、スカイプ会議。チュラ大講義。夜稽古。
27日 早朝、スカイプ会議。チュラ大講義。夜稽古。
28日 早朝の便で帰国。アゴラでHEADZ観劇。
29日 早朝7時半からの会議一件。そのまま新幹線で青森へ。東北調停協会連合会講演会。青森空港から羽田経由の深夜便バンコクに戻る。
30日 早朝バンコク着、昼稽古。夜、観劇。タイの前王が亡くなった日の話。