『コントロールオフィサー』『百メートル』のツアーが続いています。
残すところ、最終公演地の長崎のみとなりました。
初日(11月3日)のみ完売となっておりますが、他の回はまだまだお席がございます。
小さな劇場なので早めにご予約ください。
http://www.seinendan.org/play/2022/03/8067
以下、当日パンフレットの文章です。
【コントロールオフィサー】
『コントロールオフィサー』は、2016年、三重県津市にある津あけぼのという小劇場の開館10周年の記念公演のために、ここをフランチャイズとする劇団ゴルジ隊に書き下ろした戯曲です。そのときは、10人という登場人物の指定がありました。2019年に初めて自分で演出をするにあたり若干加筆を行い、さらに2020年5月の海外公演向けに人数を減らして改編を行いました。
初稿は2016年ですから、もちろん東京オリンピックがあんなことになるとは思ってもいませんでした。もともとは、2020年に小さな地震が多発し東京オリンピックへの参加を辞退する選手が続発するという構想で書かれた作品です。それがコロナが起きて、大きく改変を余儀なくされました。今回は、未練がましく、「めざしパリオリンピック編」として書き換えました。
小劇場のネットワークから生まれた作品です。昨年伺えなかった沖縄に加え、長崎にも行けることは何よりの喜びです。
【百メートル】
40年近くになる劇作家人生の中でも、これほど数奇な運命を経た作品はありません。
2019年2月。『コントロールオフィサー』をたまたま観たニューヨークのプロデューサーから、「ちょうどスポーツ、オリンピックを題材にした作品を上演したいと思っていた」という話が来て、北米公演、しかもヒューストンとサンフランシスコも回るツアーが決定。30分の作品一本だけでは興業にならないので、もう一本スポーツ関連の作品を書くことになって、無理矢理『百メートル』の原作を書き始めました。
本来の予定では、2020年のゴールデンウィークに江原河畔劇場のこけら落としの一つとして世界初演を行い、そのまま全米ツアーへという、まさに「江原発、世界へ」の象徴となる作品になるはずでした。
ところがコロナによって国内外の上演が中止。そもそも、題材である東京オリンピックも延期となり、台本の書き直しも余儀なくされました。
一昨年の年末にやっと東京公演だけを行い、そのあと満を持しての江原公演。そして久々の全国ツアー・・・と思っていたところで、またもまさかの沖縄公演中止。よりによって沖縄だけが緊急事態宣言継続という、一ヶ月前でも予想できなかった事態に直面しました。それでも『コントロールオフィサー』初演の地である三重県津市で上演が行えたのは不幸中の幸いでした。
もう一点、この作品は、400メートルリレー(作中では業界用語で「四継=ヨンケイ」と呼んでいます)は、当然、四名で走るのに対して、オリンピックの百メートルの代表選手は三名のみという数字の差に着想を得て書かれた作品です。劇中のせりふでも多少触れていますが、日本の四継が強いのは、もちろんバトンワークの素晴らしさがあるのですが、もう一点は、個人の百メートルではメダルは期待できないし、多くの選手は予選敗退するのでリレーの練習に多くの時間を割けたという側面があります。劇作家というのはつくづくいやな商売で、「この均衡がもし崩れたら」という視点から作品を書き始めました。
さて、しかしこれもまず、昨年の上演時点では現実の事情が劇に近づいてきてしまいました。参加標準記録を突破する選手が続出し、もしかするとオリンピック本番では約90年ぶりの決勝進出も夢ではない状況になったのです。そして、さらに驚くべきことに、五輪代表選考の陸上日本選手権が、江原河畔劇場での公演日程とまったく同じになってしまいました。事実は小説より奇なり、現実は常に演劇を追いかけてきます。
ただ、オリンピックの結果は、皆さんご承知の通り、短距離陣は全くの不振。そして、四継では1走から2走の時点でバトンが渡らないという悲痛な結果となりました。当然、ひねくれた劇作家は、この結果を新しい題材とさせていただきました。
極めて数奇な運命にさらされ続ける『百メートル』という作品が、今後、どうなっていくのか、作者自身ももう分からない状態です。
『日本文学盛衰史』の東北・北海道ツアーの前売りを開始しています。
劇団への扱いはなく、各劇場での扱いとなります。お近くの方、ぜひおいでください。
12月8日(木) 北海道大空町
12月11日(日) 北海道幕別
12月13日(火) 北海道富良野市
12月15日(木) 北海道江別市
12月18日(日) 岩手県盛岡市
皆様のお越しを会場でお待ちしております。
平田オリザ