皆様、たいへんご無沙汰いたしております。
いよいよ豊岡演劇祭2022,開催まで一ヶ月を切りました。
すでに多くのアーティストが豊岡、但馬に入り、創作活動や上演の準備を進めています。
https://toyooka-theaterfestival.jp/
今年の演劇祭のキャッチフレーズ「ここから、はじまる。」という言葉には、多くの願いと希望が込められています。
この夏、東京を中心に日本の演劇界では、上演の中止が相次ぎました。七月から八月にかけての上演中止は、それ以前の半年に匹敵する数だとの報告も出ています。
上演にあたって、どうしてもマスクを取らなければならない私たち舞台芸術の世界は、いまも感染者が一人でも出れば上演中止というリスクを抱えています。上演ができるかどうかは個人や団体の努力の範囲を超えており、私たちは日々、この不条理を抱えて稽古を続けています。緊急事態宣言下での中止ではないので、何の補償もありません。若手演劇人の心の疲弊は想像を絶するものです。
いまだ続くコロナ禍において、表現の場を守ることは演劇祭の最大の責務となりました。
私たちは、今年も感染防止の最大限の努力をしながら演劇祭を実施して参ります。
前記のように個別の公演は、事前に感染者が一人でも出れば公演中止とします。おそらく、すべてのプログラムを実現することはできないかもしれません。
それでもアーティストには伝えたいことがあります。表現したい何かがあります。
私たちは、その機会を閉ざさぬように、地道な努力を続けていきたいと思います。
「五年でアジア最大級、十年で世界有数の演劇祭を目指す」
二年前、豊岡演劇祭は明確な数値目標を掲げてスタートしました。
昨年の中止を経て、今年が再開の年になります。
十年後に振り返れば、「あぁ、あそこから始まったのだな」と思ってもらえるような、今年の演劇祭の目標は未来にあります。
「最大級」とは規模だけを指すのではありません。世界に類例のない、誰も見たことのない演劇祭を創り出したいと思います。
アジアの舞台芸術のハブとなり、アジアのすべてのアーティストが憧れる演劇祭となること。アジアの舞台芸術のことを知るために、世界中から人々が集まってくること。芸術の力による地域の魅力の再発見。
ここに、観光と連動した、世界でも類似するもののない新しい演劇祭が始まります。
ここから、はじまります。
どうか、一人でも多くの方に豊岡、但馬に足をお運びいただければと願っています。
すでに宿が取れないというお話も聞いていますが、各観光協会、城崎は旅館組合に問い合わせれば、まだまだ空室はあります。
お勧めは神鍋や竹野の民宿、ペンション。あるいは若い方や車でいらっしゃる方には出石もグランピングも楽しいかもしれません。
但馬は美しい秋を迎えようとしています。
皆さんと劇場でお目にかかれる日を楽しみにしています。
平田オリザ