皆さん、たいへんご無沙汰いたしております。
こまばアゴラ劇場の閉館にあたっては、多くの方にご来場いただきありがとうございました。おかげさまでつつがなく、閉館関連事業を終えることが出来ました。
さて、いよいよ「豊岡演劇祭2024」の開催が近づいてきました。
今年は、例年より会期を一週間延ばして三週間の開催になります。
この演劇祭の特徴は、アートと観光が密接に結びついた演劇祭だということです。
世界の多くの演劇祭の中でも、これほど多様なアクティビティや食を用意しているものは数少ないと思います。日頃、あまり演劇に興味のない方たちも、ぜひ、おいでいただければと存じます。
例年、演劇祭期間中は豊岡市街ではホテルがとれない状態となっていますが、近隣の江原駅周辺、神鍋高原や和田山駅前などだと空室があります。WEB上には出てない場合もありますので、直接、各観光協会にご連絡ください。
豊岡演劇祭2024は、私の作品『転校生』で幕が上がります。以下、最近書いた当日パンフレットの文章の抜粋(ほぼ全文)です。
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『転校生』は1994年、いまはなき青山円形劇場主催の青山演劇フェスティバルのために書き下ろされました。青山演劇フェスティバルは毎年テーマが決まっていたのですが、この年は「女子高生」がテーマということで、なぜか私に白羽の矢が立ち、現役高校生だけで作る舞台を任されたのでした。
今でこそ、こういった企画は各地で展開されていますが、完全公募、ワークショップによるオーディションなど当時としてはいずれも珍しく話題を集めた公演となりました。
その後は飴屋法水さん、本広克行さんなどが演出を手がけてくださり、国内外での公演が続き、『転校生』は伝説の作品となりました。
そして今年の一月、満を持して私自らが但馬の中高生たちと、この作品を創ることになりました。30年ぶりの演出です。
ポケベル全盛時代、まだインターネットもない時代に書いた作品なので、少しずつ台詞は改変しました。しかし、結果として自分でも驚くほどに台本の骨格は初演のままで進めることが出来ました。情報化や国際化がいくら進んでも、当たり前のことですが、高校生たちの生の不安定さはまったく変わっていないということなのだと思います。
一月の公演は大変好評で、たくさんの方から、これをもっと多くの方に見せた方がいいのではないかというご意見をいただき、豊岡演劇祭での再演が決まりました。
「たじま児童劇団」は創設以来、「ライバルはウィーン少年合唱団!」と豪語してきました。この児童劇団が但馬の誇りとなり、国内外から観客を集め、海外を巡演し、この劇団に子供を入れたいがために移住者が増えるところまでが私たちの目標です。
「子どもを観光や町おこしの道具に使うのか」といったしたり顔の批判が聞こえてきそうですが、今日出演する俳優たちは、そんな低俗な批判の声を吹き飛ばすような演技をしてくれることでしょう。
私たちは本気です。子どもたちも本気です。
30年前、東京・青山の演劇祭で生まれた作品が時空を超えて、豊岡演劇祭で再演されることに何よりの喜びを感じます。
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また今年のみ、宝塚市市制70周年記念事業として「豊岡演劇祭2024 in 宝塚」を開催します。9月7日、一日のみの開催ですが、阪神地区にあって、一日で豊岡演劇祭の雰囲気を味わっていただけるお得な企画になっています。「ちょっと豊岡は遠いな」「今年は残念だけど行けないな」という方は、ぜひ宝塚においでください。
https://toyooka-theaterfestival.jp/area-venue/takarazuka/
二週目以降についても、追って、ご案内いたします。
ぜひぜひ、進化形の演劇祭をご堪能ください。
平田オリザ