青年団演出部の福名理穂が岸田國士戯曲賞を受賞しました。

2022年3月06日

今回は長文となりますが、最後までお読みいただければ幸いです。

すでにご存じの方も多いかと思いますが、劇団員の福名理穂が第66回岸田國士戯曲賞を受賞いたしました。
 昨年は受賞者がありませんでしたので、一昨年の谷賢一に続いて、劇団としては連続の受賞となります。青年団演出部からの受賞は、私も含めて六人目となりました。これもひとえに、日頃の皆様のご支援の賜と感謝しております。

 また、こまばアゴラ劇場としても、前回の谷の受賞(三部作の第一部)に続いて、本年も劇場ラインナップの中から受賞作品が出たことは何よりの喜びです。
 他にも、同じくこまばアゴラ劇場で上演された額田大志さんの『ぼんやりブルース』がノミネートされたこと。あるいは、福名と並んで受賞した山本卓卓さんの『バナナの花は食べられる』は、本来なら額田作品とともに昨年の豊岡演劇祭で上演される予定だったことも、合わせて誇りに感じております。
 伸び盛りの才能を伸ばすべき方向に伸ばしていくお手伝いをすること、またそれを社会に伝えていくことが劇場の芸術監督あるいはフェスティバルディレクターの大きな役割だとすれば、このコロナ禍でも、多少なりとも、そのような仕事ができてきたかと自負しています。
 個人的には、一昨年に続き、「桜美林大学卒業生+青年団演出部」の組み合わせの受賞になったことにも、ある種の感慨を持ちました。市原さんも山本さんも私の直接の教え子ではありませんが、演劇人育成のための教育は中身よりもシステムが重要であり、きちんとしたシステムを構築すれば才能は勝手に育っていくのだと思います。繰り返しになりますが、私たちができるのはあくまで制度的なサポート、あるいは邪魔する人たちから伸びていく才能を守ってあげることくらいです。

さて一方、全国の若手演劇人は、コロナ禍で、さらなる試練にさらされています。
二月以降、上演中止、延期の報を聞かない日はありません。「感染力は高いけれど重症化率は低い」というオミクロン株の特徴は、演劇界にとっては何より厳しい環境をもたらしました。いくら重症化率が低くとも、関係者の中に一人でも感染者が出れば私たちは公演中止を検討せざるを得ないからです。ある意味では、この二年間でも、もっとも厳しい状況と言えるかもしれません。
こまばアゴラ劇場は、この二年間、公演中止が決まった上演団体にはキャンセル料の免除はもちろんのこと、支援金の支給も行ってまいりました。それぞれが苦渋の決断の中での中止や延期だったかと思いますが、未来に希望をつなぐお手伝いはできてきたかと思っています。
支援会員の皆様にも、直前の公演中止などでご迷惑をおかけしてきました。どうか、各団体、すべての表現者の呻吟の末の決断に対して、ご理解をいただければと願います。

こまばアゴラ劇場と江原河畔劇場は、2月5日より、支援会員の募集を再開いたしました。
 昨年度は、コロナ禍で上演中止が相次いだため、会員資格の自動延長を決定しました。その中でも多くの方にご寄付をいただき、(有)アゴラ企画は、どうにか危機を乗り越えてきました。今年は反転攻勢の年と位置づけ、4月から劇団の代表作『S高原から』を上演するなど、充実のラインナップをご用意しました。
 江原河畔劇場も年間のラインナップがほぼ決定して、今月中には発表の運びとなります。昨年中止となってしまった豊岡演劇祭の準備も着々と進んでおります。
 支援会員の会費は、多くの部分が若手劇団の支援に充てられます。次の岸田戯曲賞作家を生み出すために、ご理解とご協力をお願いいたします。

こまばアゴラ劇場の支援会員制度はこちらです。

http://www.komaba-agora.com/members

江原河畔劇場の支援会員制度はこちらです。
但馬割引もございますので、ぜひ、ご利用ください。

https://ebara-riverside.com/member/

 『S高原から』江原河畔劇場公演には、たくさんのお客様にご来場いただきありがとうございました。
 4月の東京公演のチケットも発売を開始しました。客席数を抑えて発売をしております。すでに売り止めの回もあります。早めにご予約ください。

http://www.seinendan.org/play/2021/02/7913

************************************

 今般のロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、私が副会長を務めます日本劇作家協会は、以下の声明を発表しました。ご一読いただければ幸いです。

http://www.jpwa.org/main/statement/20220304

また、以下のサイトは、国際批評家協会日本センターのものです。
 スクロールしていくと、日本センターの声明の下に、ロシアセンターからウクライナセンターに送られたメッセージがあります。こちらも、ぜひ読んでいただければと思います。

http://aict-iatc.jp/

 3月11日を前にして、神戸新聞に福島県のふたば未来学園における演劇教育と、芸術文化観光専門職大学での学びについて拙文を寄稿しました。

https://www.kobe-np.co.jp/column/shinro21/202203/0015102365.shtml

 平田オリザ