新年度のご挨拶

2012年4月04日

 新しい年度が始まりました。
 今年も、青年団とこまばアゴラ劇場をよろしくお願い申し上げます。

 いま、私はハノイにいます。
 ハノイでは、国際交流基金の企画で、私の書き下ろした『銀河鉄道の夜』を、ハノイ大学の日本語学科の学生たちがリーディング上演をするという催しがありました。
 2月のワークショップ、配役決定以来、7週間の授業ののちに、本日盛況のうちに発表会が終わりました。
 私は3月29日にハノイに着いたのですが、実はその前日は、日帰りの仕事で沖縄にいました。かつて、沖縄の地から北爆のB52が直接ベトナムに向かった時代があったことを思うと、この移動は感慨もひとしおでした。

 今回上演された『銀河鉄道の夜』の中には、以下のような台詞があります。

 先生「そうです。そして、それだけではなく、中国も、韓国も、アメリカも、フランスも、そして日本も、宇宙から見れば、みんな小さな一つの、ひとかたまりの点に見えるでしょう。でも、現実には、私たちは、気が遠くなるほど、離ればなれです」

二年前にフランスの子どもたちのために書いた戯曲ですから、これはまったくの偶然ですが、中国も、韓国も、アメリカも、フランスも、そして日本も、この百年の間にベトナムと戦争をした国でした。ベトナム戦争の記憶が微かに残る最後の世代としては、重ねて、平和のありがたさが身にしみる公演となりました。
 
 さて、その『銀河鉄道の夜』をはじめとして、さらにパワーアップした『さようなら』、四年ぶりの再演となる『隣にいても一人』、木崎友紀子演出の『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』と盛りだくさんの演劇展が、もうすぐ開幕します。すでに売り止めの日も出ていますが、まだまだ空いている日もあるようです。どうぞ、おいでください。

 

2012年4月1日 ハノイにて