フランス・サルトルビルより

2010年12月25日

 12月20日から、パリ近郊のサルトルビル国立演劇センターに来ています。
 クリスマスも正月もこの街で過ごし、1月25日に、フランス語版『銀河鉄道の夜』が初日を迎えます。この作品は、その後、イブリン県内を巡演し、今シーズンだけで38ステージの上演が決まっています。4月には、パリ市内の日本文化会館でも上演されます。
この劇場には、レジデンスの施設が併設されており、そこで自炊生活をしています。広い居間のドアを開けると、すぐそこが稽古場につながる階段になっています。

今年一年は、柴幸男の岸田國士戯曲賞受賞で始まり、多田淳之介のキラリ☆ふじみ芸術監督就任を経て、、深田晃司の東京国際映画祭「ある視点」部門作品賞受賞で幕を閉じるという、青年団にとってはまことに収穫の多い年でした。
 私自身は、ロボット演劇、アンドロイド演劇を連続上演し、演劇の新しい地平を切り開いたと自負しています。来年以降、ロボット演劇はさらに上演の頻度を増していきたいと考えています。

日本を発つ直前に、文学座の戌井市郎先生の訃報を聞きました。井上ひさしさんに続き、今年、私は二人の大事な先輩を失いました。戌井先生とは、次の作品の話もしていたので本当に残念です。生前、お二人からいただいた数々の言葉を思い出しながら、もっともっと戯曲を書きたいと思いを新たにしています。

来年(2011年)は、『ソウル市民』の続編を二本書きます。このフランス滞在中に、その二作の輪郭をほぼ書き上げる予定です。他の計画も含めて、上演の詳細などは、もう間もなく発表の予定ですので、ご期待ください。

 帰国後、最初の仕事は、劇団の若手俳優たちと作る『バルカン動物園』です。同時多発会話のもっとも複雑な作品で、初心に帰り、じっくり時間をとって演出をしたいと考えています。

 皆様が、いい年の瀬、そして新年を迎えられますように。

 平田オリザ