内閣官房参与就任について

2009年10月18日

 去る10月15日、鳩山総理からの辞令交付で、内閣府内閣官房参与に任命されました。

 参与というのは、ご意見番のようなもので、普段はもう少し年寄りがなるのだと思うのですが、派遣村の湯浅さんも40歳で国家戦略局参与ですから、まぁ、プチ明治維新のようなものなのだと思います。
 私は国家戦略局には直接は入らず、首相直属で働きます。
 官邸への出勤は不定期で、呼ばれたら顔を出すといった感じです。

主な仕事は、文化行政、教育(とりわけ演劇を中心としたコミュニケーション教育)、東アジア外交などに関して助言、お手伝いをするということになると思います。
また官邸からの情報発信についての助言も求められています。

こういった役職に就くことを唐突とお感じになる方もいらっしゃるかと思いますが、これまでも政府のさまざまな諮問委員などは務めてきましたので、その延長線上にあるものと考えています。また、これまでも、各政党の政策の勉強会などに講師として呼ばれることは多々あり、特に民主党の場合は、議員の年齢が私と近いことから、文化政策、教育政策について話し合う機会が多くありました。そのような経緯で、今回の参与就任となりました。

権力の中枢に身を置くことは、芸術家として、当然弊害もあるでしょう。
国家公務員となりますので、守秘義務が生じ、発言の制約も出てきます。
 しかしながら、六十年ぶりの政権交代のありようを、間近で目撃することができるのは、作家として望んでも手に入れられる機会ではなく、単純な好奇心から言っても、やはりこの仕事は受けるべきだと考えました。また私の知見が、多少なりともこの変革に役に立つなら、後世の芸術家のためにも引き受けるべきだろうと考えました。
照れずに、与えられた職務をまっとうしたいと思います。

 幸いと言っていいかどうか、劇団の年次計画では、来年度いっぱい、劇団への新作書き下ろしはありません。劇団活動はこのまま続けますが、この二年間ほどは、文化政策にも重きをおき、長期政権の弊害とも言える縦割りを廃し、より有効で持続可能な文化行政の大枠を作っていきたいと願っています。
大臣や文化庁長官ではありませんので、私自身には何の権限もありませんが、国家全体の政治の枠組みの中で、文化政策がきちんと位置づけられるように働いていきたいと思います。またこれまでも取り組んできました演劇教育の普及に関しては、よりいっそうの力を入れて進めていきます。
大阪大学、アゴラ劇場芸術監督の仕事は、これまで通りに行っていきます。

芸術家としての私の内実が変わるわけではありません。今後とも、青年団とアゴラ劇場をご支援いただきますよう、お願い申し上げます。

2009年10月17日 ソウルにて

平田オリザ